2012年5月21日、太平洋岸地域で金環日食が観察できます。
太陽と月が重なるだけの現象ですが、日本で観察できるのは1987年(沖縄)以来、久しぶりの天体ショーです。その間にデジタルカメラが普及し、撮影環境も大きく変化しました。恐らく、今回も多くの天体マニアの方々は数分のために多くの準備をされるものと思います。もちろん、デジスコファンの皆さんも写せる道具を持っているのですから、是非このチャンスを逃さずに貴重な作品をGETして頂きたいと思います。

デジスコでの金環日食の撮影方法を含め「デジスコで天体撮影」というテーマで特集を組みました。この際、デジスコで天体撮影ができる知識をしっかり学習してみてください。
【記事】
『ユーシートレード』代表 大野一郎様
今回は、2012年4月11日に石川県金沢市にOPENした光学機器専門ショップ『ユーシートレード』大野一郎さんに記事を書いて頂きました。大野さん、貴重な情報ありがとうございました。

『ユーシートレード』
代表者:大野 一郎
石川県金沢市大額3丁目240番地
サンセールせせらぎU 102号室
■Tel/Fax 076-227-8463
info@uctrade-shop.com
http://www.uctrade-shop.com/

 
1.デジスコで写せる天体
デジスコは35mm判換算で約1000〜3000mmの領域をカバーします。この焦点距離、そして地上撮影用のシステムで大きくきれいに写せる天体は月と太陽です。

惑星の撮影には更に長い焦点距離が必要となり、星を追尾する仕掛を含めて天体望遠鏡の領域となります。また、星座全体や星雲のディテールを撮影するような場合も、星を追尾するための架台(赤道儀)が必要となることが殆どです。
【photo1】
デジスコで撮影した月(ノートリ)です。画面左側は同じ日に撮影した惑星です。惑星はノートリでは非常に小さいですが、等倍で観察すると色々なことがわかります。
月はF5.3、1/30秒で撮影しました。

  ・土星:環があることがわかります。
  (F5.6、1/15秒)
・木星:楕円形で、縞模様があることがわかります。
  (F5.6、1/30秒)
・火星:黒っぽい模様や白い極冠がわかります。
 (F5.6、1/30秒)
・金星:半月状に欠けているのがわかります。
 (F5.6、1/500秒)
   
 
2.写し方のポイント
月も太陽も見掛けの大きさはほぼ同じです。約2000mmの焦点距離でその直径が画面の短辺に近い長さに写ります。但し、写真としてのバランス(構図)や導入、追尾(月も太陽も、地球の自転などの影響でどんどん動いて行きます)を考えると少し短めの焦点距離で写したほうが成功率が高くなります。デジスコでは焦点距離を短くすると周辺減光やケラレを生ずることがありますが、月や太陽の周囲(空)は真っ黒に写りますので殆ど気にする必要がありません。
   
 
3.金環日食を狙え!
5月21日の朝、太平洋側を中心に金環日食が起こります。日本では1987年の沖縄金環日食以来となる25年ぶりの天文ショーです。東京、名古屋、大阪などの大都市圏で観察でき、特に東京付近は金環帯の中心が通るという最高の条件です。

その次に日本で見られる金環日食は18年後の2030年となります。また、皆既日食は23年後の2035年まで待つ必要があります。滅多に見ることのできないビッグイベントですので、ぜひ撮影にチャレンジして下さい。

今回の金環日食については国立天文台のWebページなどが詳細な情報を発信していますので、観察や撮影に伴う危険防止の意味も含めて一読をお勧めします。

◎国立天文台HP:http://naojcamp.mtk.nao.ac.jp/phenomena/20120521/
 
【金環日食
地名 食の始め 金環日食の始め 金環日食の終り 食の終り 食の最大の時刻 最大食分
東京 6時19分02秒 7時31分59秒 7時37分00秒 9時02分37秒 7時34分30秒 0.969
静岡 6時17分43秒 7時29分44秒 7時34分42秒 8時59分10秒 7時32分13秒 0.969
京都 6時17分41秒 7時30分00秒 7時31分09秒 8時55分17秒 7時30分35秒 0.94
高知 6時15分24秒 7時25分11秒 7時28分21秒 8時49分35秒 7時26分46秒 0.946
鹿児島 6時12分49秒 7時20分05秒 7時24分17秒 8時42分26秒 7時22分11秒 0.954

 
1.撮影に適した月齢と季節
デジスコがカバーする焦点距離が月の撮影に適していることは第一話で触れました。中秋の名月はマスコミが大きく取り上げることからデジスコで撮影する人も多いようですが、満月を撮ってもクレーターが殆ど写らず立体感に乏しい(迫力のない)写真になりがちです。せっかく月の撮影に適した機材を持っているわけですから、満月以外にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

時間帯の面で撮りやすく、かつ面白いのは月齢3(三日月)〜月齢7〜8(上弦の月)あたりでしょう。超望遠レンズで天体を撮る場合には上層気流の影響を強く受けます。(シーイングが良いとか悪いといった表現をします。)野鳥撮影時に陽炎が立っていると、どんな優秀な機材を使ってもシャープに撮れませんが、同じようなことが月などの天体撮影でも起こるわけです。

4月は29日が上弦の月となります。4月24〜30日頃にぜひ狙って下さい。一般的に、月の高度(水平からの角度)が高いほど気流の影響を受けにくくなりますので、この点も考慮して下さい。三日月も上弦の月も、日没後に空が暗くなってきた頃に良い条件で撮影できます。春は気流の安定する時期でもあり、かつ月の高度が高くなります。シャープな写真が撮れる確率が高くなりますので、ぜひチャレンジして下さい。
   
 
2.露出の決め方
スポット測光、マニュアル露出が一番確実です。露出時間の目安は以下のようになりますので、撮影しながら微調整して下さい。デジカメは撮影結果がすぐに確認できて便利です。

ISO100、F5.6の場合
 三日月:1/30秒
 上弦:1/125秒
 満月:1/500秒


月は地球の自転等の影響で動いて行きますので、手早くかつ出来る限り高速シャッターを切るようにして下さい。
【photo2】
クレーターなどがわかりやすいようにトリミングした画像です。

撮影機材≫
コーワTSN-774(TE-17Wアイピース) → コレットホルダーCH-P2 →TurboAdapter P2 → TA4+3 → BR-N1 1030
カメラ:Nikon 1 V1(10-30mmズーム、24mmで撮影)、ISO100
雲台 :GIM-01
三脚 :SLIK SC 503 カーボン )

 
1.太陽撮影の注意点
太陽は強烈な光と熱を出していますので、正しい方法で観察しないと網膜症を引き起こし、最悪の場合は失明の恐れもあります。肉眼での直視はもちろん、望遠鏡や双眼鏡等で集光しての直視は更に危険ですので、絶対にしないで下さい。

太陽を撮影するためには、D4(ND10000、露出倍数1万倍)やD5(ND100000、露出倍数10万倍)といった減光フィルターが必要です。75mm角や100mm角のシートフィルターや枠に入った丸形のガラスフィルターが市販されていますので、撮影に使う機材に適したものを購入しましょう。これらのフィルターは金環日食需要で品不足が予想されますので、早めの購入をお勧めします。

フィールドスコープの対物レンズ側にはフィルターを装着するためのネジが切ってありますので、これを利用してフィルターを取り付けます。フィルターは必ず対物レンズの前に装着して下さい。光学系の中間や焦点面付近に装着すると、熱でフィルターが割れる(結果、目やカメラ等に重大な障害が生じる)恐れがあり危険です。また、これらのフィルターは撮影用であって、太陽を肉眼で見る用途は考慮されていません。十分に注意して下さい。

参考: 各スコープのフィルターネジ径を示します。必要に応じてステップアップリングやステップダウンリングを併用して下さい。
  ・コーワTSN-774:82mm
・コーワTSN-884:95mm
・ニコンED3:67mm
・ニコンED78:82mm
・ニコンED82:86mm

太陽を肉眼で見る場合は、日食専用グラス(商品名は様々です)が市販されていますので、必ずこれを使いましょう。不適切な方法(例えば黒い下敷きなどを使う)だと、可視光は十分に減光されても赤外線や紫外線の減光が不十分なことがあり危険です。
   
 
2.太陽の導入
目にとって危険な太陽をどうやってカメラのファインダーに導入するかですが、太陽を見る必要のない安全な方法としては、地面に出来た機材の影を利用する手があります。照準器を使う場合は、その前方に日食専用グラスを置く(LEDのスポット光は減光されません)方法がありますが、不用意に日食グラスが外れないよう注意が必要となります。また、眩しい太陽のほうを向いて撮影することになりますので、液晶フードを付けるかEVFを利用しましょう。また、太陽の直射光を目に入れないよう十分に注意して下さい。

導入後、太陽は地球の自転等の影響でどんどん移動します。手早く、かつ出来る限り高速シャッターで撮りましょう。何枚か撮ったら構図を調整し、また手早く撮影・・・これの繰り返しになります。

撮影中はデジカメの液晶画面やEVFを見ることになりますが、光学ファインダーと違って太陽の像を直視しているわけではないですから、目にとっては安全です。とは言え、カメラの撮像素子や光学系に対する安全性は別ですので、対物レンズ側に付けたフィルターが不用意に外れたりしないよう十分に注意して下さい。
   
 
3.露出時間について
D5フィルター使用時にISO100、F8で1/800秒が適正とされています。この数値はあくまで目安ですので、ご自身の機材で事前にテスト撮影を行って適正値を把握しておくことをお勧めします。

バックの空は真っ黒になりますので、スポット測光かつマニュアル露出が適しています。また、太陽は均一な明るさではなく周辺が少し暗いですから、部分日食が進行して金環日食に近付いた際には露出を少しプラス側に調整する必要があります。

太陽が大きく欠けてくるとスポット測光も使えなくなる可能性が高いですから、欠け方が少ないうちに露出時間を決定しておいて下さい。金環日食当日の撮影にあたっては気象条件の影響もあるかもしれませんので、露出を変化させながら連写しておくと安心です。
 
【photo3】
デジスコで撮影した太陽の画像です。黒いシミのように見えるのは黒点と呼ばれる温度の低い部分です。また、周辺が少し暗いのがわかります。ホワイトバランスは曇天に設定しました。(少し色が付いたほうが太陽の雰囲気が出ると思います。)F6.3、1/3200秒で撮影しました。
 
【photo4】
フジのND-4.0フィルター(露出倍数1万倍のシートフィルター)をケンコー製テクニカルホルダーII(大)に取り付け、スコープ先端に装着した状態です。コーワTSN-774やニコンED78ではステップアップ/ダウンリングなしで装着できます。(フィルターネジ径82mmです。)今回の作例はこの機材で撮影しました。

【関連情報1:金星の太陽面通過
6月6日に金星の太陽面通過が起こります。小さく丸い金星が太陽面を通過して行く様子が観察でき、金環日食と同じように撮影できます。金環日食より更に希な現象で、次に起こるのはなんと2117年です。

【関連情報2:ケアンズで皆既日食!

11月14日の朝、オーストラリアのケアンズで皆既日食が起こります。地上はほぼ真っ暗になり、金環日食では見えないコロナやプロミネンスが浮かび上がってきます。一生に一度は見ておきたい神秘の世界です。そしてケアンズは有名な探鳥地でもあります。うーん、行ってみたいですね。
 
KOWA ステップダウンリング
(95-82mm/95-77mm)
販売価格:\3,360-(税込)

シュミット
NDフィルターD5 52mm
販売価格:\5,985-(税込)

シュミット
NDフィルターD5 58mm
販売価格:\6,380-(税込)

シュミット
NDフィルターD5 62mm
販売価格:\8,500-(税込)

シュミット
NDフィルターD5 72mm
販売価格:\10,600-(税込)

シュミット
NDフィルターD5 77mm
販売価格:\10,700-(税込)

マルミ光機
DHG ND-100000 58mm
販売価格:\6,480-(税込)

マルミ光機
DHG ND-100000 77mm
販売価格:\10,800-(税込)

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